映画『ブルーボーイ事件』

COMMENT

※敬称略・五十音順

半世紀以上も前の「事件」を描きながら、まさに現代にひそむ困難をさらけだす。これは映画だからこそなしえた問題提起だ。この映画を通じて私たちは、トランスジェンダーをめぐる問題の核心だけでなく、さまざまな性のあり方と切り離せない人間存在の深淵にまで触れることができるだろう。

萱野稔人(哲学者・津田塾大学教授)

演技経験のないトランスジェンダー女性を主演に据えたことで、
彼女の木訥な演技が作品に驚くほどの力強さを与えている。
終盤の法廷のシーンは圧倒的で、まったく目を離せない。

佐々木俊尚(文筆家・情報キュレーター)

手術や裁判、手術後の葛藤まで丁寧に描かれ、当事者として深く共感しました。
私自身も手術や社会との関わりの中で悩み、葛藤してきました。
現在は講演活動などを行なっていますが、今もLGBTQの9割が医療不安を抱えています。

本作は、トランスジェンダー理解を深める大切な作品であると確信しています。
本作を通じて少しでも理解が広がることを願っています。

清水ひろと(日本LGBT協会代表理事・元女性戸籍2児の父)

観ながら何度も涙がこぼれました。
トランスジェンダー役はすべて当事者の役者さんが演じており、
魅力溢れる登場人物たちと、目の離せない展開に、あっという間に夢中になりました。
昔、毎日一緒に踊っていたトランスジェンダーのダンサーさん達も、
きっと信じられない程辛いことが、数えきれないほどあったのではないかと、
自分を恥ずかしく思いました。
この作品に出会えたことを心から嬉しく思います。
トランスジェンダーの友人がいる人も、そうでない人もー
すべての人に観てほしい作品です。

杉森 茜(エアリアルパフォーマー)

映画『ブルーボーイ事件』に映し出されるのは、「事件」ではなく、
そこに生きた人たちの「人生」でした。
性の多様性やその可視化の歴史において、日本社会の中で見過ごされ、
人知れず葬られてきた声やまなざしが、丁寧にすくい取られています。
私たちの「今」を深く問いかけてくる、静かで力強い作品。
ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思います。

杉山文野(NPO法人東京レインボープライド顧問)

誰かの理想のためでなく、なりたい自分になる。
誰かの描いた幸せでなく、自分の幸せを描く。
当たり前が当たり前でなかった時代、
常識に体当たりして、道を作った人たちがいる。
歴史を学ぶことで現在に感謝することができる。
そして現在がまた新しい歴史を作っていることを
私たちは忘れてはいけない。

肉乃小路ニクヨ(ニューレディー)

私も日本でまだ法律が整っていない時に性別適合手術を受けました。
その先生は私に寄り添ってくれて、私は女性になることが全てのゴールだと思っていました。
しかし、全く違いました。
人が生きたいというシンプルな悩みはどの時代でも変わらない悩みであることを
この映画は教えてくれました。

ずっと何者かになりたい、それをただ追い求める人生であろうと…
私は手術をして良かったと思います。

はるな愛(タレント)

自分のままに生きたいと願うことは、罪なのか。
社会から押し付けられる「あたりまえ」を越境し、
ただ生きるために問い続けてきたトランスジェンダー・コミュニティ。
その一員であることを誇る一方で、事件から半世紀を超えた今もなお
問い続けねばならない現実に悲憤を覚える。
本作から生まれる対話が、未来を変える力となりますように。

藥師実芳(認定NPO法人ReBit代表・トランスジェンダー)

物語の面白さは言うまでもなく、この作品には当事者の俳優が演じるからこそ紡がれる、
唯一無二の世界が広がっています。
日本のクィア映画において、間違いなく新たな希望を灯す作品だと思います。
本作に携わられたすべての皆様に、心からの拍手を送りたいです。

若林佑真(トランスジェンダー俳優・ジェンダー表現監修)

© 2025 『ブルーボーイ事件』 製作委員会